Tauはアルツハイマー病(AD)に特徴的なPHFの主成分である。Lysosome阻害剤のクロロキンで誘導されるミオパチ-(chloroquine myopathy;CM)の筋細胞内にはrimmedvacuoleが形成され、そこにはtauが蓄積する。この結果から、tauは細胞質蛋白質(cytosolic protein)でありながらlysosomeで代謝される、ことが示唆される。昨年度の研究で、LAMP-1、LAMP-2、glutamate dehydrogenaseをtau receptorの候補として同定した。本年度は培養細胞でこれらの結合蛋白質を過剰発現し、tauの代謝が変化するかどうかを35S-メチオニンのパルスチェース標識法を用いてCHO細胞、neuro2a細胞で詳細に調べた。これらのreceptor候補遺伝子を強制発現してもtauの代謝に急激な変化は認められなかった。さらにtau自体の代謝のタイムコースを検討したところ、標識後3日まで細胞内tauレベルに変化が認められなかった。これらの結果は培養細胞内におけるtauの代謝は比較的遅く、培養細胞を用いたtauの代謝経路の同定は極めて困難である事を示している。 In vivoでtauの代謝を明らかにするため、ヒトtauを発現するknockin mouseを作成した。ヒトtau cDNAの下流にb-globin poly A付加シグナル、ネオマイシン耐性遺伝子を連結し、その5'、3'の両端にmouse tau遺伝子断片を結合したknockin constructを作成した。このconstructをmouseのES細胞に導入し、ネオマイシン耐性とsouthern blottingにより相同組み替えを起こしたES細胞を選択した。このES細胞よりキメラmouseを作成し、交配によりホモのknockin mouseを作成した。このマウスではマウス由来のtauの合成が完全に停止し、ヒトtauのみが発現している事をmRNAレベル蛋白質レベルで確認した。今後このマウスを用いてtauの代謝経路を検証する予定である。
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