報告者は、嗅覚の一次中枢嗅球について、嗅球への入力(嗅受容細胞)が嗅球からの出力(投射ニューロン)へシナプス結合する場の糸球体において情報処理に重要な働きを演ずると考えられている糸球体近傍の介在ニューロン群のシナプス結合の解析を進めてきた。 平成12年度も、GABAニューロンの化学的サブポピュレーションとしてのTyrosine Hydroxylase免疫陽性ニューロン(THニューロン)のシナプス結合について更に詳細な定量的形態解析を行なった。共焦点レーザー顕微鏡と電子顕微鏡連続切片再構築を組み合わせた三次元形態解析から、THニューロンは、主に嗅受容細胞から非対称性シナプス結合を受け、投射ニューロン(僧帽細胞)樹状突起に対称性シナプスを形成する、あるいは投射ニューロンより非対称性シナプス結合を受け、別の投射ニューロンに対称性シナプスを形成するといった、Serial synapseを形成することが明らかとなった。一方でTHニューロンは、従来この種のニューロンに特徴的といわれたReciprocal synapseについては現時点までに確認されていない。これは、投射ニューロンに対する介在ニューロンのシナプス結合パターンからみて、報告者が以前明らかにしたCalbindin(CB)ニューロンと全く対照的であり、シナプス結合の側面から見た構造的サブポピュレーションが存在することを示している。 一方、CBニューロン同様に嗅受容細胞終末との近接度の低いCalretinin(CR)ニューロンについて解析を開始し、CBニューロンに比べてより複雑な蜂巣状の樹状突起パターンを示すことが、共焦点レーザー顕微鏡及び超高圧電子顕微鏡よって明らかになってきた。現在CRニューロンのシナプス結合の解析を進めている。 なお報告者は、シナプス結合の調節因子として性ステロイドに関する解析を始め、性ステロイド代謝関連物質が嗅球の特定な細胞群に存在するといった知見を得つつある。
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