大脳皮質一次聴覚野は蝸牛の周波数マップを2次元面に表現している。ネコでは等周波数帯は内外方向に向き、前方から後方にかけて高い周波数から低い周波数へと整然と配列する。特定の周波数を表現する皮質の小領域からはほぼ等周波数帯に沿う方向に局所軸索投射が見られる。隣り合う周波数帯に由来する局所投射が皮質内でどのような相互関係を形成しているかを調べる目的で、異なる順行性トレーサーを選定し、それらを同一切片上で可視化するための方法を本年度において確立した。これらのトレーサーはPHA-LとBiotinylaed Dextran Amine(BDA)であり、ともに電気泳動法により皮質内に注入し、異なる周波数帯にある少数の皮質細胞に由来する軸索終末を、ヂアミノベンチジンとヂアミノベンチジン+ニッケルイオンを用いそれぞれ茶色と黒色に弁別染色した。 予備的な結果ではあるが、以下の知見を得ることが出来た。異なる周波数帯にある細胞に由来する軸索終末は、一部の皮質領域では重複し、また他の領域では単独に分布した。重複して分布する領域は両周波数帯から異なる周波数情報を受けていると考えられ、情報の収斂がおこなわれていると思われる。 本年度は皮質の周波数マップと形態学的な投射収斂域を重ね合わせることにより、どの領域において著しい収斂が起こっているかを決定する予定である。なおこれまでの知見は2000年度北米神経科学会議において発表予定である。
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