線条体に局在するorphan G蛋白質共役型受容体(GPCR)に対するリガンドの単離により、大脳基底核の運動制御関連新分子の発見をはかるため、数百種のorphan GPCR中から線条体あるいは線条体に直接投射を持つ領域に局在するorphan GPCRを見出すべく、mRNAレベルではin situ hybridization法をタンパク質レベルでは免疫組織化学法を利用してその局在を形態学的に解析した.in situ hybridization法では既存orphan GPCRの塩基配列を基に設計したプローブでcDNAライブラリーまたはmRNAの一次逆転写産物をPCR増幅して作製したorphan GPCR非膜貫通部位数ヶ所をDNA鋳型として複数のジゴキシゲニン標識cRNAプローブをin vitro合成しこれにハイブリダイズするラット中枢神経系内のシグナルを組織切片をスライドガラスに固定せず浮遊切片のまま反応する独自の高感度かつ簡便な手法を活用して可視化した.当該部位に最も顕著なmRNA発現が認められるのはGPR6で、ORFの上流・下流の2種のプローブのいずれにおいても線条体、側坐核および嗅結節、視床下部腹内側核等に強い発現が、さらには黒質および視床下部背内側核等に中程度の発現が見られた.このGPR6に一次構造が最も類似したGPR3、GPRCのmRNA発現の脳内分布のパターンとGPR6のそれとの相異からGPR6とそのリガンドが大脳基底核の機能に特異的に関与する可能性が高いこと示唆された.続いてGPR6の大脳基底核、特に線条体での分布を免疫組織化学的に証明するため特異抗体の作製を試みたが、GPR6/3/Cのアミノ酸配列類似性は極めて高く、それぞれの特異抗体の作製は続行中である.現在のところGPR6は線条体の投射ニューロンに発現する可能性が高く、ここに発現するリガンド既知の受容体との相互作用をもとにGPR6のリガンドを精製する可能性が示唆された.
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