本研究で私はこれまでシナプシンの三次構造を解析し、シナプシンが二量体ATPase(ATP加水分解酵素)として機能し、その機能の発揮には各シナプシンI、II、IIIのATPase活性がCa^<2+>濃度に対応して異なる活性調節を受けることを明らかにした。更にリン酸化されたシナプシンがシナプス小胞から遊離することを明らかにした。そこで本研究では次に以下に示す研究を行った。 末梢組織におけるシナプシンの役割 シナプシンは神経細胞のシナプス小胞上だけでなく、末梢組織の知覚神経にも局在が認められる。しかしながら、末梢組織におけるシナプシンの機能は不明である。本研究ではシナプシンが局在する腎臓部の知覚神経末梢に注目して、サイクロスポリンA(CsA)を用いてシナプシンの機能解析を試みた。 ところでサイクロスポリンAはカルシニューリン(カルシウム要求性プロテインホスファターゼ)の活性を阻害し、免疫抑制活性および二次性高血圧症を引き起こす薬剤として知られている。 シナプシンIおよびIIを欠くノックアウトマウスは、野生型マウスと対照的にCsAによる血圧の増加は認められなかった。この結果、CsAに引き起こされた急性高血圧症のメカニズムおよび、シナプシンが二次性高血圧治療のターゲット因子に成りうると考えられる。更にこれらのデータはシナプシンのリン酸化による役割を示唆している。
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