研究概要 |
ラットノルエピネフリントランスポーター(rNET)にはmRNA前駆体の選択的スプライシングにより3′領域で異なるアイソフォームが存在し、そのうちの一つrNETbはドミナントネガティブである。そこで選択的スプライシングを介したNET発現の機能的調節を、NETを発現するPC12細胞で解析した。rNETa,rNETb mRNA発現量をRT-PCR法により調べた結果、rNETbの発現パターンはこれら12種のクローンで様々に異なり、ノルエピネフリン(NE)輸送活性の低いクローンでrNETb mRNA発現の高い例も見られたが、必ずしも両者の間に逆相関は認められなかった。一方、rNETa mRNAの発現量とNE取込み量との間には正の相関が認められた。したがってNET遺伝子転写調節などによるNET mRNAのバリアントを含めた全体としての発現量が、NET機能発現調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。次にラットNET遺伝子3'領域をクローニングし、ヒトの塩基配列と比較した結果、スプライシングに影響を与えると思われる両者で異なる配列がいくつか見つかった。例えばヒトNET遺伝子で認められるエキソン14下流のポリアデニレーションシグナル配列がラットでは一部認められない。このクローニングしたラットNET遺伝子3'領域を哺乳動物発現ベクターに組み込み種々の細胞に一過性に発現させ、スプライシングの動態を観察した。その結果、ヒトNET発現SK-N-SH細胞を含む調べた全ての細胞株でrNETa、rNETbを生じるいずれのスプライシングも認められた。したがって種特異的なスプライシングによるNETアイソフォームの発現は主としてそれぞれのNET遺伝子塩基配列の違いに基づき調節されていることが示唆された。
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