研究課題/領域番号 |
11680757
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研究機関 | 香川医科大学 |
研究代表者 |
宮本 修 香川医科大学, 医学部, 助教授 (00253287)
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研究分担者 |
板野 俊文 香川医科大学, 医学部, 教授 (60145042)
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キーワード | 低体温療法 / 脳虚血 / グルタミン酸受容体 / MK-801 / NMDA受容体 / 併用療法 / 海馬 / 神経細胞死 |
研究概要 |
昨年度までの研究成果から、虚血後低体温療法に関して以下の事が明らかとなった。 1.虚血後低体温療法(32℃x4時間)は砂ネズミ海馬の虚血性神経細胞死を有意に抑制するが、長期的にはその効果が減弱する。 2.低体温療法後の慢性的な神経細胞死の原因として、神経細胞のグルタミン酸受容体の異常発現が考えられる。 このように、低体温療法後の慢性的な神経細胞死の原因として、グルタミン酸受容体の関与が考えられる。そこで、今年度は低体温療法後のグルタミン酸受容体の変化を明らかにするために、グルタミン酸受容体の各サブユニットの変化を遺伝子、タンパクレベルで検討した。その結果、低体温療法後に海馬領域におけるNMDA受容体の分布とその発現量に異常が生じることが判明した。すなわち、虚血による変化と思われる海馬CA1領域のNMDA受容体の障害が、低体温療法群においてもみられた。また、慢性的な神経細胞死に対する治療法の開発として、グルタミン酸受容体アンタゴニストであるMK-801の長期投与(1mg/kg、隔日投与、1ヶ月間)を虚血後の低体温療法と併用したところ、低体温療法後の慢性的な神経細胞死を有意に抑制できた。加えて、この併用療法により海馬神経細胞死による学習機能の低下も防ぐことができた。なお、MK-801単独投与力は神経細胞保護効果はみられなかった。 虚血によってグルタミン酸伝達系の過剰な活性化が起こり、これが神経細胞死の原因の一つとなっている。虚血後低体海療法は有効な、治療法ではあるが、虚血時のグルタミン酸大量放出を抑制することはできない。そのため、虚血性神経障害を完全には抑制できないと思われる。しかし、本研究により、グルタミン酸伝達系の過剰な活性化を抑制する薬剤との併用により、虚血後低体温療法の効果を長期的に保つことが可能であると考察される。
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