PC12細胞を用いて、NGFおよびcAMPアナログによるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)発現の調節機構を解析した。また、PC12細胞をCPTcAMP、ニコチン及び高カリウムで刺激し、刺激に伴うp42/44 MAP Kinase(ERK)とCREBの活性化を、リン酸化MAPK(P-ERK)とリン酸化CREB(P-CREB)に対する抗体を用いてウエスタンブロット法で解析した。その結果、PC12細胞では、CPTcAMP処理により、nAChRα3mRNA(α3mRNA)のdown-regulationがみられた。このdown-regulationはProtein kinase Aの阻害剤により抑制された。また、NGFを培養液に添加すると、PC12細胞ではα3mRNAのdown-regulationがみられたが、PC12h細胞では逆にup-regulationがみられた。いずれの場合も、Res-MAP kinaseカスケードを抑制すると、NGFの影響が消失した。PC12細胞およびPC12h細胞をニコチンで刺激すると刺激5分以内にニコチン濃度依存的にERKのリン酸化が促進された。ニコチンによるERKのリン酸化はNGFによるERKリン酸化に比べ著しく低く、また、持続時間も短かった。ニコチン刺激によるERKリン酸化はヘキサメトニウムで抑制されたが、高K^+によるERKリン酸化はヘキサメトニウムで抑制されなかった。MAPkinase kinaseの阻害剤はニコチンや高カリウムによるERKリン酸化を抑制した。また、dominant negative Rasを高発現しているPC12細胞株ではニコチンや高カリウム刺激によるERKリン酸化の促進が見られなかった。これらの結果から、α3mRNAレベルの調節は、CREBやERKのリン酸化過程を介して起こっていると思われる。
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