BC1RNAは神経細胞で発現し樹状突起へ輸送される。本研究はBC1RNAの樹状突起輸送cis配列に結合するトランスリンについて解析する事を目的としていた。しかし解析の結果、トランスリンのBC1RNAcis配列に対する結合特異性は低く、また微小管に結合する事も観察されなかった。更に、他の研究グループがトランスリンとしているタンパクについても、実際にはそれが違うものではないかと疑われた。我々は以上の点について最近の発表論文の中で指摘した。そのような経緯から本研究では、トランスリンに関する解析を断念し、研究の過程で見い出された別のBC1RNAのcis配列結合タンパクについて解析した。そのタンパクについて得られた結果を以下にまとめた。 1BC1cis配列に特異的に結合した。2微小管に結合し、BC1RNAを微小管に結合させた。3BC1cisを使って精製しアミノ酸配列を決定した結果、それは転写因子のpur alphaであった。4特異抗体を用いてpur alphaがBC1RNAや微小管に結合する事を確認した。5免疫染色によってこのタンパクが樹状突起に見い出された。6細胞質ではポリソームに結合していた。また、その結合には、主に60Sサブユニットが関与していた。7免疫染色によってこのタンパクは中枢、末梢の神経細胞に非常に多いこと、非神経細胞では分泌上皮細胞に多い事が分った(投稿準備中)。8このタンパクはBC1cisおよび、BC1遺伝子の5'隣接配列にあるpur結合性配列の双方に結合して、in vitroにおける転写を促進した。9nascentBC1RNAはpurタンパクと複合体を形成した。この事は樹状突起輸送BC1cisが転写や核外への輸送反応に関与し得る事を示唆している。
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