研究概要 |
我々の開発した透析酸素電極による酸素非依存性リアルタイムグルタミン酸(GLU)測定系は,ラット脳虚血時に起こるGLUの放出機構と再潅流後の再吸収機構を区別して評価できる。この方法を用いることで,脳温上昇による脳虚血障害の成因に再潅流後のGLUの再吸収機能が重要な影響を与えていることが明確になった。 今回我々の行う研究課題は,近年,救急医療で効果を上げている,低体温療法の臨床データを踏まえ,超急性期の脳温と脳障害の病態生理を研究し,虚血後の再吸収機構の活性化を促進する薬物が虚血障害の治療薬として有用と考え,脳温上昇時のGLU再吸収障害をモデルとして,グルタミン酸関連薬物のGLU再吸収能への薬効をスクリーニングし,(平成11年度),いくつかの効果のあった薬物に対し,脳卒中発症後の後遺症の軽減に役立つ薬物を再吸収機構への効果と病理組織像で検討を行う(平成12年度)ことを計画し実行している。 研究開始後,薬物の選択に関して,現在臨床領域で汎用されている,脳神経系代謝改善薬に着目し,数種類の薬物に関してスクリーニングを行った。この結果,麦角アルカロイドの誘導体であるニセルゴリンが,虚血再潅流時の再吸収能を高め,動物の虚血による致死率を大幅に改善させた。さらにその致死率と,再吸収能には,強い相関があることが判明した。 脳保護機構のにおいての低体温療法の機序が,虚血後の再吸収機構の活性化(障害軽減)作用にあり,ニセルゴリンの作用と共通することから,これらのモデルを利用し,虚血後の脳保護機構の解明をすることは大変有用と考え,今年度(平成12年度)の研究を継続する所存である。
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