研究概要 |
母体ラットへの騒音ストレス刺激(800ヘルツ;77デシベル,一日15分間、妊娠10日から18日まで毎日)と強制水泳ストレス(一日15分間、妊娠10日から18日まで毎日)とを組み合わせて負荷すると、それらから生まれた雄性新生児の生後4週目に測定した騒音誘発性の自発運動低下現象(情動行動の指標)が増強することが認められた。しかし、雌性新生児では認められなかった。また、このような母体へのストレスは、生後6週目に測定した水迷路学習(学習行動の指標)において雄性新生児の全エラー回数を増加させたが、雌性新生児の全エラー回数には影響しなかった。これらのストレスによる情動および学習行動への影響は、母体ラットのブシピロン処置(ストレス負荷30分前、妊娠8日目から18日目まで毎日)によって消失した。このように、出生前に受けたストレスが、性依存的に情動行動ならびに学習行動に影響を与えている可能性が示唆された。神経化学的側面では、母体ラットへのストレスは、それらから生まれた新生児の脳における5-HT_<2A>受容体および5-HTトランスポーター結合活性に性依存的に影響することが見出された。一方、5-HT_<21A>受容体結合活性には影響が認められなかった。結論として、母体へのストレス刺激は、それらの新生児脳においてセロトニン神経ネットワークの異常形成を引き起こし、それらの情動行動ならびに学習行動に影響している可能性が推察された。
|