これまでに、βアミロイド(Aβ)によって誘導される遺伝子群をdifferential displayとNorthern blotによって探索し、その一つはmicrotubule associated protein 1B(MAP1B)であることがわかっている。MAP1Bには、exon1から始まりexon7に終わるtranscriptの他に、exon3Uやexon3Aから始まる2種類のaltemative transcriptがあるが、このうち、Aβ1-42によって誘導されるのは、胎生期に強く発現するexon3Uから始まるtranscriptであった。そこで、exon1から始まるMAP1B constructとexon3Uから始まるMAP1B constructを作成し、それぞれの3'端にmyc-tagを付加して発現ベクターに組み込み、初代培養ニューロンに一過性に強制発現させた。抗myc-tag抗体による免疫組織化学を行い、強制発現されたMAP1Bを可視化したところ、発現強度は導入24時間後に強く、48時間後には減少し、72時間後には消失した。次に、15時間培養した大脳ニューロンにそれぞれのMAP1B constructを導入し、さらに24時間培養した後、培養ニューロンの形態変化を、突起の長さと分岐数について調べた。その結果、exon3Uから始まるMAP1B constructを強制発現させたニューロンは、exon1から始まるMAP1B constructを強制発現させたニューロンに比べ、突起長の短いものが多く、突起の分岐数も少ないことがわかった。以上のことから、Aβによって誘導される胎児性MAP1B(exon3Uから始まるMAP1B)は、ニューロンを未分化な形態にとどめることが推測できる。
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