研究概要 |
平成12年度はArcadlinおよび、細胞内でArcadlinと結合するタンパク質の機能解析を行い、以下の新しい知見を得た。 1)Arcadlinの細胞内結合タンパク質を明らかにするために、Arcadlinの細胞内領域を酵母に発現させ、two-hybrid systemを用いて、相互作用するタンパク質のcDNAをクローニングした。クローニングしたcDNAをデータベースで解析したところp38MAPKの上流に位置するTAO2 kinaseであることが分かった。 2)ArcadlinとTAO2の結合を確かめるため、HEK293TにArcadlinおよびGFP-TAO2を強制発現させ、Arcadlinの細胞外領域の抗体を用いて免疫沈降を行ない、抗GFP抗体でウエスタンブロットを行った。その結果、GFP-TAO2の分子量付近(110-120kDa)にGFP-positive bandが出現した。このことから、細胞内でArcadlinとTAO2が結合していることが予想された。また、共焦点レーザー顕微鏡による観察でも、ArcadlinとTAO2が細胞膜直下で共存していた。 3)培養細胞にArcadlin,TAO2,MKK3,p38を強制発現させ、Arcadlinの細胞外蛋白を外から加えたところ、P38,MKK3がともにリン酸化(活性化)されることがわかった。この結果からArcadlinが細胞外で同種結合することによって、TAO2を介してMKK3、次にp38 MAPKを順番にリン酸化(活性化)すると考えられた。この結果は、神経活動によって誘導されたArcadlin分子がシナプスへ運ばれ、そこで同種結合することによってシナプス結合を強化・安定化するとともに、その情報が細胞内へ伝わり、次の分子の誘導によってシナプス結合の安定化が長期に保持される可能性が出てきた。
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