研究概要 |
筆者らがAlzheimer病(AD)脳アミロイドの分析から未知分子としてcloningしたNACP(non-Aβcomponent of AD amyloid precursor)は、α-synucleinとも称され、その遺伝子変異が家族性Parkinson病(PD)の原因遺伝子として同定され、PDの特徴的神経病理であるLewy小体の本態がNACP全蛋白質であることを筆者等は示した。Lewy小体はPDのみならず、痴呆が主症状のLewy小体型痴呆(dementia with Lewy bodies:DLB)の本態であり、Lewy小体病として総括される。従来その本態が不明であった。多系統萎縮症(multiple system strophy:MSA)の細胞内異常繊維構造がNACPであることも筆者等は示した。本研究はNACPの分子病理から、これらの神経変性疾患の本質に迫ることを目的としている。 11年度は、NACP発現ベクターをPC12細胞に導入して、NACPを過剰発現させ、stable transfectantsを40クローン得た。発現ベクターのみのクローンも10得た。蛋白質発現の検出は、独自に開発した抗NACP抗体(MDV2,EQV1,PQE3,REE1)を用いた。ラットPC12細胞は、NGF添加により神経細胞に分化する事が知られており、先ずこの細胞が、NACP(α-synuclein)familyのどのタイプを発現しているかを知るために、RT-PCRで検索した結果、β-synuclein(PNP14)のみを発現している事が判明した。又、NGF添加後の神経分化に伴ってその発現がどのように変動するかを、時間経過を追って検討したところ、蛋白質レベルでは顕著な変化はみられなかった。又、これまでLewy小体等の病理的構造体にβ-synucleinが検出された報告はなく、NACP(α-synuclein)のみが異常構造をとると考えられている。αとβと一番異なる点はNAC配列の有無であり、この疎水性の配列が異常構造形成の鍵と思われる。得られた50クローン(40+10)をWestern blotしたところ、40の中で4クローンにNACPの発現を確認出来、解析を進めている。
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