これまでに、ラット脳において、痙攣誘発物質が脳由来神経栄養因子の合成を促進することを明らかにしてきた。本年度も、ひき続き、ラット脳における脳由来神経栄養因子の合成促進剤について調べた。脳由来神経栄養因子の合成は、神経細胞の活動に依存して活性化されると言われており、イオンチャネルによる制御が考えられた。そこで、本年度は、電位依存性イオンチャネルの活性化剤や阻害剤の効果について検討し、以下の結果を得た。 1 電位依存性カルシウムチャネルの活性化剤であるBay-K8644が、大脳皮質の神経細胞における脳由来神経栄養因子の合成を特異的に促進した。一方、阻害剤は、それ自身ではまったく影響しなかったが、活性化剤の作用を明らかに阻害した。 2 電位依存性ナトリウムチャネルの阻害剤であるリルゾールが、海馬顆粒細胞の脳由来神経栄養因子の合成を特異的に活性化した。さらに、リルゾールのグルタミン酸放出阻害作用に合成促進作用のあることが明らかになった。一方、活性化剤は影響しなかった。 3 電位依存性カリウムチャネルの阻害剤である4-アミノピリジンが、海馬と嗅内皮質の脳由来神経栄養因子合成を促進したが、リルゾールに比べるとその作用は弱く、不安定であった。活性化剤は、この場合も、それ自身ではまったく影響しなかった。
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