研究概要 |
すべての哺乳類の聴覚皮質には、機能的構造としての周波数局在が認められ、近似する特徴周波数はバンドを形成する。このような聴覚皮質特有の機能が回路網としてどのように形成されているかは非常に興味深い。本研究では、光学的測定法でモルモット聴覚皮質の機能的解析を行った後、多電極相関法によりニューロン間の機能的つながりを計測した。初年度は、光学的計測法によるモルモット聴覚野の中心領域および周辺領域での機能的解析、特に、両耳特性を中心に解析した。また、難聴動物での周波数バンドの可塑的変化や、2音刺激による皮質活動の相互作用を調べた。次年度は、多電極相関法によりニューロン間の機能的つながりを計測した。モルモット聴皮質は、純音対側刺激に対し潜時20-25msの応答を示す一次聴覚野(AI)とそれより1-2ms遅れて応答を示す二次聴覚野(AII)の中心領域が従来どおり観察され、その周辺に9つの時間経過の異なった周辺領域が見つかった。特に、中心領域の尾側にあるP、VP野は、AI、AII野に比べて5-10ms遅く、持続時間の長い応答を示した。また、両耳刺激に対する応答は同側音刺激の音圧に依存してAI、AII野より低い音圧で消失した。この結果は,AI、AII野より両耳刺激に敏感であることを示し、方向知覚に何らかの役割を果たしているものと考えられる。それらの結果に基づき、各領域に4本の電極を挿入し、水平方向に同側(-90)から正面(0)、対側(+90)まで30度毎に音源の位置を変化させ、音刺激時の相関と自発放電時の相関を測定した。その結果、対側方向の音刺激に対して大きな応答を示す傾向が観察された。方向特異的なニューロンは覗察されなかった。また、周辺領域の自発放電の相関は中心領域より強い傾向が見られ、電極間距離約850μmに第2のピークが観察された。さらにその回路網を調べるため、現在パッチ電極法による解析を試みている。
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