平成11年度培養神経細胞PC12(細胞株の名称)に、蛍光を発するように遺伝子改変が行われたシナプトタグミンを遺伝子導入する(辰巳担当)。この蛍光を発する蛋白分子をもつ細胞を現有の全反射型近接場光顕微鏡にセットする。シナプトタグミンは細胞膜のすぐ近くの細胞小胞に突き刺さるように位置していると考えられる。近接場光による細胞の励起では、細胞の膜からわずかに200nm以下の蛋白分子が蛍光励起されることである。このわずかな光の層にある蛋白質分子、あるいは蛋白質分子の集合が近接場光イメージングされる。細胞を興奮するように化学的な刺激を与えると、斑点状に蛍光が変化することが見出されており、その細胞生物学的意味を近接場光を用いて検討した。11年度の研究では蛋白分子シナプトタグミンのこの斑点状の蛍光変化の意味を検討する。すなわち、蛋白分子シナプトタグミンが近接場光のなかで形を変え、それが蛍光発色団蛋白の光エネルギー準位に影響するかを検討した。つぎに光の強度変化の意味を探るために、ベシクルからの物質の放出過程を可視化する蛍光色素で同時に細胞を処理する。これにより、ベシクルからの物質の放出過程とGFPの斑点状の蛍光変化の関係を検討した。 平成12年度本研究では、神経成長因子NGFを添加して、PC-12細胞が神経様に形態変化することを観察している。同時に、神経様に形態変化し、樹状突起を伸ばすときの先端に形成される神経成長円錐部にシナプトタグミンが集積していく様子を観察している。この集積は、神経成長円錐部にベシクルを集めシナプス形成の準備をおこなっていると考えることもできる。成長円錐部におけるベシクルの放出過程を近接場顕微鏡で観察し、細胞体でみられる放出機構と比較した。また、ベシクルを細胞先端に運ぶ仕組みや、ベシクルの放出と細胞の膜の供給の関係についても検討をおこなった(辰巳担当)。
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