大脳皮質における神経結合の基本的構築は遺伝的プログラムによって形成されるが、細部の神経回路形成は神経活動を介する因子によって制御されると考えらる。本研究では、培養した大脳皮質切片を用い、皮質間神経結合の形成過程において皮質ニューロン軸索の分枝の形成がどのように制御されるかを明らかにすることを目的とした。特に、大脳皮質の2/3層のニューロンから発するhorizontal axonに着目し、その成長、枝分かれ形成をシナプス伝達の遮断剤の存在・非存在下で、定量的に調べた。また、本研究では双極電極を用いた新たなエレクトロポレーション法を開発し、それによって培養したラットの大脳皮質切片内の少数の細胞に蛍光タンパクのベクターを導入することを可能にした。 まず、生後0-1日目のラット大脳皮質切片を切り出し、無血清培地下で培養した。培養13-15日後に、2/3層を水平方向に伸長する軸索(水平軸索)を蛍光タンパク質GFPによって標識し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察した。その結果、通常の培養液下では数個から10個の枝分かれが生ずるのに対して、グルタミン酸受容体のブロッカーを添加した状態では、枝の数が優位に減少することが明らかになった。同様の枝分かれの減少はTTX存在下においても観察された。以上の結果から、皮質ニューロンの枝分かれ形成には、神経活動が関与している可能性が強く示唆された。
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