鳥類の発声神経核におけるテストステロン作用機構の解明

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11680793
• 研究機関: 上智大学
• 研究代表者: 青木 清 上智大学, 理工学部, 教授 (70101029)
• キーワード: ジュウシマツ / distress callディストレス・コール(DC) / dorsomedial nucleus(DM核) / 軸索 / 非対称型シナプス / robust nucleus of archistriatum(RA核) / プレイバック / 神経活動

研究概要

本研究は、成鳥ジュウシマツの雌雄が発声するdistress callに性的ニ型があることを利用して、その音声の発声中枢dorsomedial nucleus(DM)核について、どのような神経系の機構によって雌雄で異なる音声が生ずるかを解明することを目的とする。(1)成鳥ジュウシマツのディストレスコール(DC)の音響学的構造は雌と雄では異なる。雄はDM核に歌の中枢robust nucleus of archistriatum(RA)核からの神経軸索の入力があり、それを切断すると雌と同じ音響学的構造をもった音声を発声した。このことを踏まえて雄DM核からRAの軸索の切断前と後について電気生理学的手法によって神経活動を記録した。結果はいずれも発声前にインパルスの頻度の増加があった。しかし、発火パターンには差がみられた。(2)形態学的にみてRA核からDM核内で順行性に標識されたシナプスは非対称型シナプスで興奮性シナプスであると思われる。(3)雄DM核の特徴はDM核の背側部にRA核からの軸索の入力があって、局所的にコールの発声に関する神経回路に接続している。(4)幼鳥時ではディストレスコールの音響学的構造やDM核そのものに雌雄差はみられないが、発達の過程で発声系の神経系に雌雄差が生じて、音声そのものにも差が生じる。これはRA核からの軸索がDM核内で新たなシナプスを形成することによると思われる。(5)成鳥雌雄のDM核内から神経活動を記録して、ディスタンスコールのプレイバックによって仲間のDCを聞かせた時の神経の反応パターンを調べた。神経の反応パターンには大きな差はみられなかったが、雄の方がインパルスの持続時間は長く、発火頻度は高いことがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "Testosterone modulates calling behavior in Japanese quail chicks"Zoological Science. 14. 219-225 (1997)
• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "Stimulation elicits the chick crowing with testosterone in Japanese quail chicks"Zoological Science. 14. 227-231 (1997)
• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "Non-genomic action of testosterone mediates avian vocal behavior."Proc.Japan Acad.. 74(B),No.6. 132-135 (1998)
• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "The Role of Auditory Feedback in the Maintenance of Song in Adult Male Bengalese Finches Lonchura striata var.domestica"Zoological Science. 15-6. 837-841 (1998)
• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "Testosterone modulates stimulation-induced calling behavior in Japanese quails."J.Comp.Physiol.A.. 184. 13-19 (1999)
• [文献書誌] Kiyoshi AOKI: "The role of dorsomedial nucleus (DM) of intercollicular complex with regard to sexual difference of distance calls in Bengalese finches."Zoological Science. 17No.9. 1231-1238 (2000)
• [文献書誌] 青木清: "行動生物学"朝倉書店. 141 (1997)