研究概要 |
本研究は成鳥ジュウシマツについて、音響学的構造に性差のある本能行動のdistance call(DC)を発声する発声中枢のdorsomedial nucleus(DM)核の生理的機能と解剖的構造から解明することである。成鳥になってDCに雌雄差が生ずるのは幼鳥から成鳥になるとき、性ホルモンのテストステロンの作用によってRA核が発達して、そこから発達する神経軸索がDM核に入力することによっている。このことは、成鳥雄の両側RA核の電気破壊によりDM核への神経軸索の入力を切断する前と後のdistance callの音響学的分析の結果から証明できた。このDM核内に微小電極を刺入して、神経のインパルスを記録した。雄と雌のDM核内からのインパルスの発火パターンには性差はみられなかった。雌雄とも発声行動発現に先だってインパルスの頻度の増加がみられた。成鳥の雄のDM核の神経系について形態学的にみると、RA核からの入力があるDM核内で順行性に標識されたシナプスは興奮性シナプスであった。さらに、雄DM核の特徴はDM核の背側部にRA核からの軸索の入力があって、局所的にコールの発声にかかわる神経回路に接続していることである。 成鳥雌雄DM核から神経活動を記録して,DCのプレイバックを聴覚系を通して聞かせたときの神経活動の反応パターンを解析した。雄のインパルス発火している時間は雌の発火している時間より長かった。さらに雄の発火するインパルス頻度は雌のインパルス頻度より高かった。 以上の結果は、本能行動であるDCの性的差は、雄のDM核にRA核からの神経軸索の入力がDCを制御していることによっていることを示している。我々はRA核からの神経の入力はテストステロンの作用によって生ずることを神経行動学的研究によって明らかにした。
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