本研究課題は立体視における単眼性の奥行き手掛かりの寄与を知覚レベルと神経細胞レベルの双方より探ることを目的とする。その為にサルをあらかじめ訓練して奥行き情報による弁別課題を行わせ、サルが奥行きをどう知覚しているのかを調べる必要がある。研究課題の初年度は行動課題の開発、訓練(実験)装置の整備、及びサルの訓練を行った。 弁別課題では、サルがレバ一押しにより試行を開始し、ディスプレイに呈示された注視点を注視し始めると、奥行き方向の凹凸を含むテスト刺激が呈示される。ある遅延時間の後に2個のスポット刺激(それぞれが凹凸に対応する)が左右に呈示される。テスト刺激に含まれる凹凸に基づいて左右に視線を移動し、正しい方のスポット刺激へ視線を移動すると報酬として水を与える。訓練中は頭蓋骨に固定した金具により頭部を固定し、両眼に埋め込んだアイコイルにより常時目の向きを記録する。注視点から半径0.5度以内の部分を注視している場合にのみ、訓練プログラムが進行する。試行の10%は注視点の変化を検出する注視課題とし、課題遂行中の注視を強化する。 訓練(実験)用の設備を一式用意した。両眼視差を与える為に、単残光特性をもつディスプレイと液晶シャッターを用意し、左右の目に異なる画像を120Hzで交互に呈示できるようにした。比較的単純な刺激図形に単眼性の手掛かり(接合パターンや輪郭の曲率、影、明暗の勾配やテクスチャーの密度勾配)と両眼視差を加えて刺激図形とした。現在2頭のサルを準備し、1頭は弁別課題の習熟訓練中、1頭は訓練装置に慣らし中である。 訓練の進展に伴い、凹凸の量を操作して課題遂行中のサルの奥行き弁別の心理物理データを収集しサルの奥行き知覚における単眼性の手掛かりの役割を調べる。このために心理物理実験用の解析プログラムを作成した。
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