研究課題
基盤研究(C)
脳を構成する多数の神経細胞は、その特殊性から、神経前駆細胞から分化する過程で神経伝達物質とその合成酵素および受容体遺伝子の発現を巧みに調節するユニークな制御機構を備えていると予想される。このような脳・神経系の分化に伴う遺伝子発現のスイッチON/OFFを制御する機構に係わる遺伝子の解析は、生物学的にも極めて重要な意味を持つだけでなく、脳神経疾患のメカニズムを理解する上でも大きな意味を持つと考えられる。申請者は、多くの転写因子に共通するPOZドメインをN末端に持つZnフィンガー蛋白、RP58を発見し、その遺伝子をクローニングして以下の点を明らかにした。(1)RP58蛋白が、標的DNA塩基配列をプロモーターに持つ脳神経細胞特異的な転写抑制因子であり、遺伝子不活化領域として知られる核内ヘテロクロマチンに局在していることを金粒子を用いた免疫電子顕微鏡解析で明らかにした。(2)脳神経前駆細胞から神経細胞への分化に伴って、RP58蛋白のN末端を欠損するペプチド、RP58βが減少し、逆に、RP58とC末端を欠損するペプチド、RP58αやN末端を欠損する小脳神経細胞特異的なRP58γが出現することが判明した。特に、RP58γは小脳のプルキンエ細胞を欠損したPCDマウスでは認められないことから、小脳のプルキンエ細胞特異的なペプチドであった。以上の結果は、RP58蛋白の機能が、脳・神経系の分化に伴って出現する種々のペプチドによって制御されていることを意味している。(3)英国、Cambridge大学のグループとの共同研究で、DNA methyltransferase,Dnmt1がRP58蛋白と相互作用することを発見した。Dnmt1は、histone deacetylaseと結合することが知られているので、DNAのメチル化、クロマチンの変化がどのようにして転写抑制を引き起こすのかを明らかにする上で大きな成果と考えられる。今後の研究の発展が期待される。
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