ラット海馬培養神経細胞にカルシウム感受性色素(Fluo-3)を含んだパッチ電極でWhole-Cellの状態にすることにより単一の神経細胞にカルシウム感受性色素を投与する。この細胞から細胞内にカルシウム濃度を測定するとともに、パッチ電極で膜電位をコントロール、シナプス電流を測定した。神経細胞のシナプス部位でのカルシウム濃度の時間的、空間的な変化からシナプス部位を同定そのシナプスにおけるシナプス後電流を記録した。細胞外液にTTXを入れておくことにより細胞の興奮を抑え、自発的伝達物質の放出によるシナプス後電流とシナプス後細胞のカルシウム流入を測定する。細胞の興奮が抑制された条件下での自発的伝達物質放出は単一のシナプス小胞由来とみなすことができ、この条件下で観察されたシナプス後反応は単一のシナプス由来とみなせる。平成11年度にはこの記録法で確認した単一シナプスにおけるシナプス後電流とNMDA型グルタミン受容体を介したシナプス伝達の解析(NMDA受容体/non-NMDA受容体の割合、分布、それぞれの受容体を透過するイオンのうちカルシウムの割合)を検討した。その結果単一シナプスにおけるNMDA型とAMPA型のグルタミン酸受容体を介したシナプス反応のに正の相関が見られた。この結果は単一シナプスにおいてすれぞれのグルタミン酸受容体を共通の因子が調節している可能性を示唆し、最も、可能性の高い仮説はそれぞれの受容体が単一シナプス小胞からのグルタミン酸では飽和しておらず、放出される伝達物質の量がシナプス後反応を調節していると考えられた。
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