ラット海馬培養神経細胞から低密度の培養系を作成、単一の神経細胞にカルシウム感受性色素を含んだパッチピペットを用いWhole-cellの状態にすることによりカルシウム感受性色素を投与、whole-cellパッチクランプ記録と、細胞内カルシウム濃度の同時測定を行った。この系を用いて、部位を同定した単一シナプスからグルタミン酸受容体を介したシナプス電流を記録した。平成11年度にはシナプス電流のうちAMPA型グルタミン酸受容体成分とNMDA型受容体成分の大きさの間に正の相関を見出した。この相関は単一シナプスレベルでは両型の受容体は飽和しておらず、伝達物質の放出量によりシナプス反応が調節されていることを示唆するものである。平成12年度には単一シナプスにおけるNMDA型グルタミン酸受容体を介したシナプス反応について解析を行った。NMDA型グルタミン酸受容体は細胞内のカルシウムにより抑制を受けることが知られており、又、カルシウム透過性が高いことも知られている。今回、カルシウムバッファーをパッチピペットを介して細胞内に投与、NMDA型グルタミン酸受容体を介したシナプス反応(シナプス電流とカルシウム流入量)のばらつきについてここのシナプスで測定した。その結果、単一のシナプス伝達においても流入したカルシウムによるカルシウム依存性のNMDA型受容体の抑制が起きることが確認できた。この流入したカルシウムによるNMDA型グルタミン酸受容体抑制はnegative-feedback機構として働きシナプス伝達に伴うカルシウム流入量を比較的狭い範囲に調節していることがわかった。
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