研究概要 |
本プロジェクトでは、大脳前頭葉連合野からトップダウン的に記憶情報を操作する神経回路(Hasegawa et al. Science 281, 814-818, 1998)の実体について単一ニューロン活動のレベルから認知行動レベルにいたる一貫した理解を目標とする。この目的のために、前年度までにオペラント条件付けによりニホンザルに認知課題を遂行するよう訓練し、1. 機能的磁気共鳴画像(fMRI)法を用いた非侵襲的イメージング実験による大脳の活性化地図作成、2. 1で作成した大脳の機能地図を参照しながら抑制性神経伝達物質GABAのアゴニストであるムシモルを微量注入する不活化実験の準備ならびに微小電極法による単一神経活動記録実験を並行して進めてきた。前年度から推進していた1.5テスラのMRI実験において、信号雑音比・空間分解能等の技術的問題から脳梁後半部離断標本における大脳記憶関連領野の活性化地図の作成が困難であることが判明したため、当該年度には高磁場MRIシステムの開発を行った。静磁場コイルとして4.7テスラ超伝導磁石を用い、立ち上がり時間200マイクロ秒で高速に傾斜磁場の切り替えが可能な傾斜磁場コイルを装備した。このシステムを用いて、予備実験として覚醒下のニホンザルにおいて眼球運動記憶課題遂行中の脳活動を計測した。両側前頭葉の前頭眼野および背側運動前野、補足眼野、視覚関連領野において賦活領域が検出された。今後さらに視覚性連想記憶課題等の認知課題における賦活化実験を行い、不活性化実験・電気生理学的実験を進めてゆく予定である。
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