研究概要 |
生後10-14日齢ラット脳から前脳基底核(Basal forebrain nuclei;以下BFと略)を含む厚さ300μmの切片を作成し、顕微鏡下にBF内の大型(長径25μm以上)および小型(長径15μm以下)ニューロンを同定して両ニューロンから同時ホールセル記録を行なった。電気生理学的性質から、大型ニューロンはアセチルコリン性と考えられた。記録電極を通じて小型ニューロンに脱分極性パルスを与えると、約10ペアーに1ペアーの割合で、大型ニューロンからシナプス電流応答が記録され、この応答はbicucullineによって遮断されたことから、小型ニューロンはGABA性と考えられる。一方形態学的解析により、ソマトスタチン含有GABA性ニューロンが、アセチルコリン性ニューロンとシナプスを形成していることが明らかになり、この2種のニューロン間に相互作用が存在することが示唆される。 BFとの類似性、相違点が議論されている線条体のアセチルコリン性介在ニューロンへのGABA性シナプス伝達の解析を行なった。アセチルコリン性ニューロンから記録されるGABA性抑制性シナプス後電流は、外液中に投与したドーパミンにより濃度依存的に抑制された。また、ドーパミン受容体アゴニストおよびアンタゴニストを用いた薬理学的解析、自発性抑制性微少シナプス後電流の解析、さらに、N型およびP/Q型カルシウムチャネルブロッカーを用いた解析を行い、シナプス前D_2タイプ受容体活性化により、N型カルシウムチャネルを通るシナプス前終末へのカルシウム流入が阻害され、GABA遊離が抑制される、という結果を得た。これは、伝達物質遊離を制御するシナプス前ドーパミン受容体と特定のカルシウムチャネルサブタイプとの共役を同定した最初の仕事である(Journal of Physiology,2001,in press)。
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