生後1〜3週の幼弱モルモットは、母親から引き離すことにより容易かつ安定してSeparation Call(以下、SCと略す)を惹起できる。幼弱動物にモルヒネを投与すると SCが減少することは古くから知られていた。しかしオピエート物質はどれもSCを減少させるというわけではなく幼弱ラットにおいては選択的κ(カッパ)受容体アゴニストの投与でSCが増加させるという報告がある。そこで幼弱モルモットにおけるオピエート物質の作用を系統的に調べた。実験準備として、麻酔下において生後1週令の幼弱モルモットにガイドチューブを中脳水道周辺灰白質に埋め込み、歯科用レジンで固定した。幼弱モルモットの中脳水道周辺灰白質にμ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)、ノシセプチン受容体に選択的なアゴニストであるDAMGO、DPDPE、U50488、ノシセプチンを注入用カニューレを用いて中脳水道周辺灰白質に微量注入(0.5μl)した。注入前後のSCを観察することによりμ、δ、κ、ノシセプチン受容体のSCへの影響を調べた。コントロールとして生理的食塩水を投与した。その結果、μおよびδ受容体に選択的なアゴニストの投与により幼弱モルモットのSCが著名に減少した(投与前の約20%)。ノシセプチンの投与によるSC抑制は中等度(投与前の約50%)に止まった、成体モルモットにノシセプチンを投与した時には、ほぼ完全にSCが抑制されたのとは、対照的であった。オピエート受容体は発達に伴い分布や密度が変化することが報告されているので、成体と幼弱モルモットでの反応の違いはノシセプチン受容体の生後発達に由来することが示唆された。また、κ受容体に選択的なアゴニスト投与により反応に変化はなく、幼弱ラットにおいてκアゴニストの投与でSCが増加するという報告と一致しなかった。ラットとモルモットという種差が関係しているものと考えられる。
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