研究概要 |
幼弱モルモットにモルヒネを与えると、母親から引き離しても鳴かなくなるというPnaksepの報告以来、発声とオピオイドの関係は、しばしば議論されてきた。しかしオピオイドならば、どれも発声を減少させるというわけではなく、幼弱ラットではカッパ受容体アゴニストのU50488の投与により、発声が増加するという報告がある。そこでモルモットの発声におけるオピオイドの作用を系統的に調べてみた。また、従来の研究では、オピオイドを全身投与するため作用部位が不明瞭であった。脳幹にある中脳水道周辺灰白質(Periaqueductal gray : PAG)はサル、ネコ、ラット、モルモットにおいて種特異的な音声を惹起するのに必須の中枢とされているので,PAGにオピオイドを限局微量注入し発声への影響を調べた。成体モルモットでは前帯状回の腹側部を電気刺激することによる発声、幼弱モルモットでは母親から隔離した際の発声が、それぞれPAGにオピオイドを微量注入することでどの様に変化するか観察した。オピオイド受容体は現在、ミュー、デルタ、カッパ、ノシセプチンの4種類が報告されているが、それぞれに選択的なアゴニストとしてDAMGO、DPDPE、U50488、ノシセプチンを用いた。成体モルモットではミュー、ノシセプチン受容体アゴニストにより発声が著名に減少した。一方、幼弱モルモットではミュー受容体アゴニストのみならずデルタ受容体アゴニストによっても発声が著名に減少した。デルタ受容体アゴニストの抑制作用は生後2-3週で強く生後4-5週では抑制作用は減弱し、成体では抑制作用は認められなくなった。幼弱モルモットのノシセプチンの抑制効果は成体に比べて弱かった。これらの結果からオピオイト受容体の生後発達に由来する変化が示唆された。
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