モルモットは、多彩な鳴き声を使って音声コミニュケーションをしている.モルモットの種特異的な音声は、ウレタン麻酔下において中脳水道周辺灰白質(Periaqueductal gray : PAG)を微小電気刺激することによっても誘発することができた.モルモットの種特異的な音声のうち、セパレーション・コールとメーティング・コールに関与する神経回路を形態学的に検索するとセパレーション・コールに関与しているPAG部位は前帯状回腹側部より強い投射を受けているのに対し、メーティング・コ-ルに関係したPAG部位は内側視索前野を中心とした視床下部から強い投射を受けていた. 次に、モルモットの発声に対するオピオイドの作用を系統的に調べた。成体モルモットでは前帯状回の腹側部を電気刺激することによる発声、幼弱モルモットでは母親から隔離した際の発声(infant cry)が、それぞれPAGにオピオイドを微量注入することでどの様に変化するか観察した.オピオイド受容体は現在、ミュー、デルタ、カッパ、ノシセプチンに分類されているが、それぞれに選択的なアゴニストを用いた。成体モルモットではミュー、ノシセプチン受容体アゴニストにより発声が著しく滅少した。一方、幼弱モルモットではミュー受容体アゴニストのみならずデルタ受容体アゴニス卜によっても発声が著名に減少した.デルタ受容体アゴニストの抑制作用は生後2-3週で強く生後4-5週では抑制作用は減弱し、成体では抑制作用は認められなくなった.幼弱モルモツトのノシセプチンの抑制効果は成体に比べて弱かった.これらの結果から、オピオイド受容体の生後発達に伴う変化が見い出された.infant cryの消長がオピオイド受容体に対する反応性の変化する時期に一致しているので、オピオイド受容体の増減がinfant cryの消長に関わっている可能性が示唆された
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