研究概要 |
本研究はマウス大脳皮質視覚野のシナプス可塑性に対する暗闇飼育の影響と、シナプス可塑性に関与する候補遺伝子群の探索を目的とする.昨年は暗闇飼育に重点をおき、出生直後より長期に暗闇飼育したマウス成熟動物の視覚野内の神経回路網はネコおよびラットなどの他の動物同様可塑的な状態を保ち続けていることを明らかにした.本年は興奮-抑制入力のバランスが損なわれたことから可塑性レベルが低下したグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD65)遺伝子欠損変異体において神経活動に依存して変動する前初期遺伝子であるegr-1の発現の異常が認められたことから、初めにGADの下流のシナプス可塑性関連候補遺伝子としてこのegr-1に注目した.しかし、egr-1の遺伝子欠損変異マウスにおいては、他の前初期遺伝子群(egr-2,egr-3,c-fos)のmRNAおよびタンパク質の発現量はWTと同様であるにも関わらず、単一神経細胞記録の結果からは眼優位可塑性のレベルは正常であることがわかった.次に、可塑性関連候補遺伝子を探索するために、プロテオーム解析をはじめた.すなわち、野生型(WT)と可塑性レベルが低下していることが明らかとなった組織型プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)遺伝子欠損変異体(tPAKO)の単眼を遮蔽し、4日後に視覚野両眼性領域を取り出し2次元電気泳動を行った.その結果現在までに、tPA KOにのみ強く発現しているスポット(3)、WTに強く発現しているスポット(1)およびWTとKOにおいてパターンが異なるスポット(1)を見いだした.現在、質量分析計を用い、これらのスポットが既知あるいは未知のタンパク質であるかを同定中である.今後は、同様の解析を暗闇飼育後の成熟マウス、CAD65KOにおいても行い、同定されたタンパク質が可塑性に関与する可能性を明らかにしていく.
|