老化促進モデルマウス(SAM系マウス)の8-oxoguanine除去修復酵素、8-oxoguanine DNA glycosylase(OGG1)に関する研究から以下の知見を得た。 SAMR3を除く4系統のSAMR系マウスと9系統のSAMP系マウスはOGG1にR336Hアミノ酸置換突然変異をもち、さらに全てのSAMP系統はR304W/R336Hの2重突然変異をもつことを明らかとした。 R304W変異を持つSAMP1、SAMP7系マウスの肝臓、脳ホモジネート中にはOGG1活性が全く認められず、R304W変異は酵素活性を喪失させることが確認された。また、COS細胞内で強制発現されたR336H置換を持つGFP/OGG1-R336Hは核への集積が認められず、R336H変異は核移行シグナルの喪失の原因となっていることが確認され、2カ所のアミノ酸置換ともに正常なOGG1機能を喪失させていることを証明した。 3ヶ月齢のSAMR1とSAMP1の肝臓中では正常なOGG1をもつC57BL/6Jと比較してそれぞれ1.7倍、1.5倍の有意に高い8-oxoguanine量を有することを明かとした。12ヶ月齢ではSAMP1がC57BL/6Jの1.5倍の高値を維持していたのに対し、SAMR1ではC57BL/6Jと同じレベルに減少していた。 (SAMR1xSAMP1)F2交雑群を用いて老化度評点とOgg1遺伝子との相関を、また(B10.BR x SAMP1)交雑マウス70匹を用いてOgg1遺伝子と寿命、および生存曲線との相関を解析したが、いずれとも相関は認められず、変異型Ogg1がSAMP系マウスの促進老化・短寿命の原因である可能性は棄却された。しかしながら、高い8-oxoguanineが維持されることがSAMP系マウスの促進老化・短寿命の原因である可能性は棄却できず、さらなる検討が必要であると考えられた。
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