研究概要 |
ウイルスの複製過程の多くのステップは宿主細胞に依存しており,そのためにウイルスの種特異性,組織特異性が決定されていると推測されている。遺伝子改変動物を中心に実験用マウスの感染症として現在最も問題になっているマウス肝炎ウイルス(MHV)は,マウスおよび近縁のげっ歯類に感染するが,その他の哺乳類には一般に感染しない。よって,MHVはウイルスの種特異性,組織特異性を研究する上で,良いモデルとなり得ると考えられる。一方,MHVの複製メカニズムの全容が明らかになれば,ウイルス抵抗性マウスの作出も可能となる。近年,これに深く関与する宿主因子の一つであるウイルスレセプター(Bgp-1)がクローニングされ,この分子がMHV-JHM株の脳内接種に対するマウスの感受性を決定していることが明らかにされた。しかし,感受性型レセプター(Bgp-1^a)を発現するBALB/cマウスとC57BL/6マウスの肝細胞および腹腔マクロファージでのMHV-JHM株の増殖性をin vitroで比較したところ,マクロファージでの増殖性にこの2系統間で差はなかったが,肝細胞での増殖性はBALB/cマウスの方が高いことが明らかとなった。その原因を探るため,マクロファージおよび肝細胞でのBgp-1の発現を2系統間で比較したが,差は見られなかった。その後,MHVの増殖性に関与している肝細胞因子の探索に努力したが,残念ながら研究期間内にそのような因子を見つけることはできなかった。
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