研究概要 |
遺伝性侏儒症/甲状腺機能低下症ラットrdwは常染色体劣性の遺伝子座rdwに支配された侏儒症ミュータントラットである。当初は下垂体性の侏儒症と推測されていたが,その後甲状腺機能障害(hypothyroid)が原因の侏儒症であることが示されてきた。本報告では、rdw遺伝子、病態関連タンパク質、疾患モデル動物としての有用性等について解析した。 遺伝子解析:rdw遺伝子座を第7染色体にマップした。hypothyroidを呈する遺伝病としてヒト、ウシ、マウスなどで遺伝性goiter病が報告され、その原因としてthyroglobulin(Tg)遺伝子の変異が報告されている。ラットTg(rTg)遺伝子座は詳細な位置は未詳ながら第7染色体に存在することが報告されていることから、rTg遺伝子座のマッピングを試みた結果、rdw遺伝子座と完全に一致した。rTG cDNAの全塩基配列を調べたところ、rdwにおいて、G→Cの塩基置換が見つかり、その変異はアミノ酸レベルでもGly→Argの置換を伴っていた。タンパク質解析:rdw甲状腺で増加するタンパク質として,Protein Disulfide Homolog P5,Erp60(ER-60protease),Erp72(ER-72protease)を同定した。甲状腺の形態学的解析:rdw甲状腺は,Tgが膨大化した小胞体に蓄積し,核が瀘胞くう側へ移動していた。疾患モデル動物としての有用性:甲状腺ホルモンの経胎盤と胎児の脳発達、麻酔覚醒遅延と薬物代謝、心臓機能解析等のモデル動物としての有用性が示された。更に,以上の結果から、rdwではTg遺伝子に点突然変異が存在し、その変異がTgタンパクの輸送、糖付加、安定性などに影響を及ぼし、それがhypothyroidの原因となっていることが示唆された。rdwは今後RE貯蔵病、正常・異常タンパク質合成、タンパク輸送機構等の研究利用が考えられる。
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