研究概要 |
本研究は、マウスのパスツレラ症の病因であるPasteurella pneumotropicaの輸送培地および形態学的性状に焦点を絞り、各種培地における本菌の生存性と電子顕微鏡観察による本菌の構造を明らかにするために実施した。まず、本症の診断方法確立のための研究の一環として、本菌の輸送培地について検討した結果、、本菌の輸送培地としてL-15輸送培地が最適であることが明らかとなった。すなわち、用いたATCCマウス株、マウス分離株およびラット分離株のいずれの株においても、保存開始から7日間経過しても10^5から10^6個の菌数が本培地において維持されており、菌数の低下はほとんど認められなかった。次に、本菌の諸性状とマウスに対する病原性との関係を検討するために、前述した3株の菌の電子顕微鏡観察を実施した。その結果、いずれの菌もグラム陰性菌に特有の構造を有していたが、マウス由来株とラット由来株では形態に違いが認められた。マウス由来株では多くの菌において細胞の構造が良く保持されていたが、ラット由来株においては苗の死滅している像が多く観察された。このことは、人工培地の環境に対する両菌株の生存性あるいは増殖性に差があることを示唆してると考えられた。また、線毛様構造が観察された。さらに、Pasteurella multocidaで用いられているフェリチン法(Jacquesとfoiry,1987)をこれらの菌株に応用したところ、細胞壁の外側にP.multocidaとは明らかに異なる構造物が観察された。続けて、これらの菌株について糖の分解性などの生物学的・生化学的性状を調べたところ、マウスおよびラット分離株はJawetzの生物型に属することが明らかとなった。また、ラクトースの分解性において菌株間で相違が認められた。
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