研究概要 |
動脈硬化の発生・進展と力学的因子の関係を総合的に明らかにするためには,流れが内皮細胞に及ぼす影響だけでなく,血管壁内の応力・ひずみ分布を精密に知ることが必要不可欠である.そこで本研究では,家兎胸大動脈に実験的に動脈硬化を発症させ,その局所のひずみ状態を残留ひずみを考慮して詳細に知るために,組織標本から計測した局所の血管壁形状と加圧に伴う血管壁局所の変形を組合せて計測することを目標にしている.研究初年度の本年度は,内圧負荷に伴う血管壁の局所変形を計測する装置の開発と計測結果からのひずみ算出法の確立を行った.即ち,血管表面に取りつけたマーカーの加圧に伴う動きを複数の方向から撮影し,その3次元的位置を求め,これをもとに同一の血管横断面内の血管表面における円周方向伸び量の場所による違いを求める手法ならびに算出アルゴリズムを確立した.また,内圧-外径関係を計測した位置から血管の輪切り標本を得て,これを半径方向に切断して残留応力を解放したものから組織標本を作成し,その形状を詳細に計測し,血管内腔面における円周方向伸び量を推定する方法を確立した.日本白色家兎に1%コレステロール食を24〜32週程度与えて飼育し,動脈硬化を発症させた後,胸大動脈を摘出し,上記方法により,血管壁の円周方向伸びの場所による差を調べたところ,動脈硬化の進行した血管では場所によるひずみ分布のアンバランスが顕著になっていることを示唆する結果が得られた.
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