研究概要 |
本研究では,計算機上に心臓血管系の数理モデルを構築し,動脈硬化など,これまでに考えられている加齢に伴う循環系の状態をモデル上で再現し,数理シミュレーションを行う事で,加速度脈波に現れる変化を臨床データと比較し,そうした考えを検証する事を目的としている.本研究で用いる心臓循環系モデルの基本的な構造は既に整っているが,各部分の整合性,各種パラメータ値の設定等に検討の余地が残されている.平成11年度はまず各部の整合を取る事を優先し,より洗練されたモデルを構築する事に重点を置く.モデルが循環動態を正しく表現している事の検証のために,過去に行なわれた航空機のパラボリックフライト実験で得られた重力変化時の心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧等の変化データを用いてモデルによる再現を試みた.その結果,モデルが実際の心臓血管系の本質的特性を表現し得る段階に至った事を確認した. また,そうした確認を推める事と並行して,加齢に伴う心臓血管系の各種の条件の変化を調査したところ,動脈硬化が大きな要因である事が判り,モデル上で血管系の硬さ(コンプライアンス)を変化させる事で指尖に相当する部位で脈波が変化する事を確認した.その変化の定性的な傾向は臨床データに現われる傾向と良く一致している事を確認した.今後さらに定量的にも信頼出来るモデルとするため,次年度も引続き,生理学的な知見を導入し,モデルを洗練していく.
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