研究概要 |
【方法】血栓溶解に有効な超音波の性質について人血を用いて調べた。超音波出力は生体への副作用を考慮してパワーメータの計測下に0.75W/cm^2と一定にしつつ、超音波の発振周波数、駆動電圧波形、照射モードを変えて血栓溶解速度を評価した。発振周波数は20〜2000kHz、駆動電圧波形はsin, square,"N" wave、sinc関数、超音波ポンピング作用として近接した3波長の高速切り替えを行った。血栓は生理食塩水に浮遊させ、生体とほぼ同じ超音波インピーダンスを有するシリコン容器に入れて照射を行った。溶解率は超音波照射前と後の血栓重量の測定で、溶解速度の時間的連続的モニターは血栓周囲の生理食塩水の可視光レーザの透過率の変化で行った。超音波照射音圧波形はハイドロホーンを移動させて空間的部位による差を測定した。【結果】最も効果的な超音波周波数は200〜250kHzで700kHz以上では効果は乏しかった。高周波では照射パワーが同じでも周波数増加とともに血栓溶解に有効なキャビテーションが発生しにくくなることにもあると推論される。この有効な周波数は血栓の存在する容器の形状が波長の奇数分の1で反射波と共振しやすい条件に一致すると照射パワーが増強されキャビテーションを発生しやくなるためと考えられ、この発生は視覚的にも確認された。従って生体では血栓の存在する血管径や臓器の構造も最適な超音波波長に影響する可能性がある。超音波の圧力波形では急速な印圧を発生しキャビテーションを生成し易い場合、効果が大きくなると考えられる。近接した3波長を高速に切り替えて作成したポンピング波は定在波が存在せず、音圧の節・腹が移動し、正確な血管径や臓器内構造が不明な臨床的条件では共振周波数を設定することは難しいので、周波数の複合とその高速切り替えは実用的に有効と考えられる。
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