本研究は、大腸、小腸を移動できるCCDカメラ視覚システムを搭載したロボットは、生物の移動メカニズムを利用した移動ロボットを開発するもので、形状記憶合金を用いた移動ロボットと空圧式移動ロボットの2つのロボットの比較検討を行い、消化管内移動用として最適なロボットを開発することを目的とする。このため、ロボット開発とCCDカメラ画像により消化管内の観察を目指した。 生物の移動メカニズムとしてミズの伸縮匍匐運動を採用し、ロボットが管内を推進するメカニズムとして、2つの管内を保持する機構と推進する機構に分けて運動を再現した。 形状記憶合金を用いたロボットには2方向性形状記憶合金を用い、保持部にはパンタグラフ機構、推進部にはコイル形状とし、通電加熱することにより後部のパンタグラフ機構が開いて管内保持し、次に推進のコイルが伸びて推進するものである。本ロボットの特徴として2方向性形状記憶合金は加熱のみで冷却が不要で、自然冷却により機構が運動する点にあるが、曲管への対応、CCDカメラの搭載に問題があった。 空圧式ロボットはロボットの保持部はバルーン型を採用しているため、空圧による大腸壁が半径方向に膨らむが、万一膨らみすぎないようにするために大腸の管腔径をセンシングすることとした。センサーはバルーンを保持するパイプにスリットを入れて、ひずみゲージによりバルーンに加わる圧力を測定することにより管腔径を予測する方法とし、異なる管径によりバルーンに加わる圧力と空圧の関係を求め、危険防止システムを構築した。CCDカメラによる目標部位までの距離計測手法の開発したが、小型CCDカメラにズームレンズがないため、得られた画像をパソコンモニターに表示させ、画像上から目標物までの距離を計測するソフトウエアを開発したが、目標物形状の認識、計測誤差及び2枚の画像から距離を計算時間に問題があるため改善が必要である。ロボットの制御にはDSPを用い、パソコンで制御する手法を開発した。また、ロボットの推進速度の可変を可能とした。ロボット本体は直径37mm、全長120mmで曲管も移動できる。肛門括約筋を傷つける恐れがあり、さらなる小型化を目指す必要がある。 形状記憶合金を用いたロボットと空圧式ロボットの評価を行った結果、空圧式ロボットが消化管内の移動に適している。しかし、肛門括約筋を傷つける恐れがあり、大腸のS状結腸を通過させるためには、さらなる小型化を目指す必要がある。
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