近年、植え込み後の宿主における生体適合性あるいは組織親和性を良好に維持するような人工臓器および生体材料の開発、改善にはめざましいものがある。『石灰化は生体の持っている防御反応の1つの形式』であり医療用具を植え込むと遠隔期に病的な石灰化が観察されることがある。この石灰化は病変にマクロファージが出現し、オステオポンチン(OPN)を産出した結果ではないかと考えた。この度、チアノーゼ性心疾患を有する小児にBTシャントとして植え込まれ、根治術時に摘出された。ePTFE人工血管に注目した。さらには臨床において動脈硬化性変化として観察される内膜肥厚および石灰化をも研究対象に含めた。摘出した人工血管は肉眼的には石灰化は観察されなかったが、組織標本では年単位の植え込み期間にて血管壁内に石灰化を伴わないマクロファージの侵入が認められ、さらに島状の石灰化が存在する標本も存在した。CD68抗マクロファージ抗体を用いたところ植え込み期間1年11ケ月の標本にて陽性所見を得た。また動脈硬化性病変でも同様にCD68様所見が得られた。人工血管およびヒトの動脈硬化においてCD68陽性マクロファージの関与が示唆されたため、オステオポンチンとマクロファージとの関連性を検討しているところである。今後さらに臨床標本を集め検討を続けたい。
|