研究概要 |
近年、植え込み後の宿主における生体適合性あるいは組織親和性を良好に維持するような人工臓器および生体材料の開発、改善にはめざましいものがある。『石灰化は生体の持っている防御反応の1つの形式』であり医療用具を植え込むと遠隔期に病的な石灰化が観察されることがある。この石灰化は病変にマクロファージが出現し、オステオポンチン(OPN)を産出した結果ではないかと考えた。摘出標本からは、完全に石灰化している人工臓器は細胞が侵入していたのか、侵入していた細胞が石灰化を誘導したかも明らかにすることが困難であった。特に、石灰化が人工臓器内に完成しているとその周囲の代謝状態が悪く、マクロファージを含め、細胞も存在できない状態になっていた。そこで、石灰化の形成される前の、マクロファージが存在する状態の外科標本を採取し評価することにした。外科標本として冠動脈バイパス術のグラフトのうち、頻用しており、石灰化していることの多い右胃大網動脈および橈骨動脈のうち、術中に硬く触知し、石灰化を起こしていると考えられる部分を採取し、組織学的、免疫組織学的に評価した。すると動脈硬化部位の周辺にCD68抗マクロファージ抗体に陽性に染色される細胞を検出できた。同時に、マクロファージに関係するCD14,HAMおよびIA4の免疫染色を行った。本研究においては石灰化とマクロファージに関係があることを示すことは可能であったが、OPNとの関係を人工臓器の中に形成される石灰化において明らかにするには至らなかった。
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