研究概要 |
脳内の神経細胞の電気的興奮に基づいて発生する微小磁界を超高感度磁気センサであるSQUID磁束計で測定・記録したものが脳磁図(MEG)である。MEG計測法は,従来,頭表に垂直な磁界成分(法線磁界成分)のみを測定し,そのデータに基づいた波形解析や信号源推定,いわゆる逆問題を解いてきた。しかしながら,複数の信号源が存在する場合は単純な双極子分布とはならず複雑になり,信号源は数や向きなどの事前条件の不確定性が高くなり逆問題解の獲得が困難となる。そこで,研究代表者らは,磁界の三成分が同時に測定できる三次元ベクトル計測用磁界検出コイルを組み込んだ39チャネルSQUID磁束計を開発し,MEGの三次元ベクトル計測の実現を達成してきた。本年度は,主として,以下に示す二つの課題について研究を行った。1)複数信号源推定に際し,磁界の三成分を同時に評価した推定アルゴリズムの開発,および,2)MEG波形の時間・周波数解析の信号処理法の開発である。その結果,1)については,MEG計測から得られた時間・空間データに対した特異値分解を用いた複数信号源の推定アルゴリズムの提案,2)については,ARモデルやウエーブレット変換による波形の時間・周波数解析アルゴリズムの開発および主成分分析による周波数解析を行った。 これらの成果については,学術誌に投稿し,1999年度の各論文誌(IEEE Trans. on Magnetics:1編,日本応用磁気学会誌:2編,Supercond. Sci. Technol.:1編)に掲載および掲載決定となっている。また,1編が投稿中である。来年度は,新しいMEG信号処理システムの実現に向けて更なる進展を計りたい。
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