研究概要 |
バイオフィードバックは意識上と意識下の間で成立する学習過程であると考えられる。その生理学的機序につながるものとして,初年度に引き続き,意識上での通常の学習や弁別に伴う大脳辺縁系や大脳基底核の活動を脳磁気測定を中心として詳細に調べた。被験者には視聴覚を組み合わせた弁別課題を課した。得られた誘発脳磁界に対して等価電流双極子推定による解析を行った結果,感覚入力から統合,弁別に対応すると考えられる各大脳皮質領野に活動源が推定された。すなわち,刺激呈示後80〜130msにおいては視覚野および聴覚野に,160〜210msにおいては側頭および頭頂連合野に,240ms以降においては前頭前野および眼窩前頭野がそれぞれ活動中心であった。一方,その過渡期である130〜160msおよび210〜240msにおいては,大脳辺縁系および大脳基底核に活動が見られた。また,この部位の活動は250ms以降には断続的に観測された。この結果は,辺縁系や基底核が脳活動の相変化や高次機能遂行に重要な役割を演じていることを示唆している。この部位は,一方では視床や脳幹と神経連絡があることから,ここを介しての自律機能等意識下の体内調節機能へのつながりが予想される。次に,脳の高次機能に伴う前頭部の活動をさらに詳しく調べる目的で,f-MRIを利用した脳機能計測に着手した。装置の制約からまず視覚のみの課題をとり上げた。現在,立体視覚の認知の際に課題の難易度と連合野の活動範囲や,前頭前野の左右差および活動度を中心として解析を行っている。
|