研究概要 |
本研究の目的は,日常生活における精神的ストレスの定量計測であり,研究初年度は携帯型ディジタル生体信号モニタ装置の開発研究と,胃の蠕動運動を利用した精神的ストレス計測の可能性について検討を加えた.「はっと驚く」ような強い一過性のストレスの定量計測に関しては心拍変動が有効であるが,「気分が滅入る」ような比較的弱い慢性のストレスに対しては「食べる気がしない」というように,胃の活動に影響が現れると考えたためである. まず携帯型ディジタル生体信号モニタ装置に関しては,マイクロコンピュータ技術を用い,32チャンネルの異なる生体信号を同時にモニタし,容量無制限(本研究では45MB)のIDE仕様のコンパクトフラッシュカードにデータを記録出来,単3乾電池4本で約80時間連続モニタ出来,大きさ112×80×33mm,重さ200gのコンパクトな装置を開発することが出来た. 次に胃の蠕動運動の計測に関しては,胃電図に着目した.胃の蠕動運動は腹部表面に電極を貼り付けることによって胃電図として記録できることが知られている.本研究では,この胃電図を計測するためにゲイン1000〜10000倍,通過帯域DC〜0.016Hzの計測アンプを開発した. 実際には下記に示す日常生活のいくつかの生活場面における胃電図変化を記録した.記録したのは,リラックス場面として1)熟睡時,2)ストレス解消用音楽,またストレス場面として3)冷たい氷に手を浸すコールドテスト,偶然に記録できた4)好意を抱いていない人からの突然の電話場面である.結果は,精神的なストレスが加わっていないと思われる状況下では比較的小振幅で周期の大きな胃電図が記録され,ストレスが加わると波の振幅が大きくなり,また周期が短くなることが明らかとなり,精神的ストレスのモニタリングに胃電図が利用できることが明らかとなった.
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