研究概要 |
本研究の目的は,日常生活における精神的ストレスの定量計測であり,胃の蠕動運動を利用した精神的ストレス計測の可能性について検討を加えた. 研究初年度にはまず,携帯型ディジタル生体信号モニタ装置の開発研究を実施し,約80時間連続モニタ出来るコンパクトな装置を開発することが出来た.胃の蠕動運動の計測に関しては,胃電図に着目し,専用の計測アンプを開発した.実験さは,熟睡時,ストレス解消用音楽,冷たい水に手を浸すコールドテスト,偶然に記録できた好意を抱いていない人からの突然の電話場面を記録した.結果は,精神的なストレスが加わっていないと思われる状況下では比較的小振幅で周期の大きな胃電図が記録され,ストレスが加わると波の振幅が大きくなり,また周期が短くなることが明らかとなった. 研究2年度は近赤外光に着目し赤外線計測システムを製作した.結果は,胃体部における嚥下反射の計測では,胃の体表面からの距離の違いで,胃の蠕動運動に伴う反射強度の変化が計測された.また胃の蠕動運動の計測結果は,食後一時間経過した時点で規則的な運動が観測され,近赤外光によって胃の蠕動運動が計測可能であることが示された. 研究最終年度には,近赤外光による胃の蠕動運動計測方法を改良した.短時間ダイオードを発光させ,タイミングを合わせて体内からの散乱赤外線を取り込む方法を検討した結果,全く熱を持たない状態で発光させることが可能となった.実験では,飲水時の胃の反応運動,手を氷水に浸す温度ストレス実験,暗算実験の3つを計測した.結果は,飲水時に胃の受け入れ弛緩による受光輝度の変化が観測できた.また,温度ストレス実験,暗算負荷実験に関しては,被検者によって反応が異なるものの,ストレス性と思われる胃の異常な収縮現象が確認でき,胃の運動計測がストレス評価の指標となりうることが示された.
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