研究概要 |
血管内の血流動態異常が動脈硬化や動脈瘤等の血管病変の成因となることが知られている。したがって,体内の血流状態を正確に把握することが,血管病変の予防と治療に役立つと考えられる。そこで,本研究ではコンピュータを用いた計算力学の方法により,血管内の流れを解析することを目的とする。コラプシブルチューブとは血管を模擬したつぶれやすい柔軟なチューブのことであり,体外模擬実験や数値シミュレーションでの血管モデルとして使われる。そこで本研究においてもコラプシブルチューブを血管のモデルとして扱い,血流とチューブの変形に関する連成問題を解いた。 この連成問題はチューブ則を用いると流れ方向の一次元問題として定式化することが可能となる。そこで,チューブ則を用いて血管内の拍動流をコラプシブルチューブを伝播する単一脈派とモデル化して解析し,圧力波に関する解析結果と実測結果を比較して良好な一致を確認した。次に,このチューブ則を数値計算により二次元的に高精度計算する方法を示し,同時にコラプシブルチューブの座屈大変形の三次元数値シミュレーションを行い,チューブ則に及ぼすチューブ端面の三次元効果やその除去法について考察した。 大動脈弓をモデル化したテーパ付き曲り管内の拍動流を三次元解析し,流速分布を実験と比較すると共に特有な二次流れの構造を明らかにした。この流れでは管壁は剛体壁として扱ったが,次にチューブが流れにより座屈大変形した場合のチューブ軸方向の圧力分布を計算する方法を示した。同時に,このチューブ形状に対するチューブ内の三次元流れを数値的に求め,流速分布を実測結果と比較して良好にすることを確認し,さらに断面内二次流れ,せん断速度分布,壁せん断応力の分布を計算して,8文字形に座屈変形した断面の中心部に高い壁せん断応力域が発生することを示した。
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