研究概要 |
低出力レーザ光と臨床で注射薬として認可されている細胞賦活剤プラトニンとを併用した光免疫療法において、免疫担当細胞の1つであるマクロファージの活性はより高まり、担癌マウス腫瘍部の瘢痕化、封じ込めや、さらに腫瘍部が脱落する結果が得られ、治療の可能性が窺われた(研究発表参照)。また、この際低出力のレーザ光のみでもその活性化の傾向が見られたことから、低出力レーザ光が及ぼす免疫担当細胞の活性効果を検討し、そのメカニズムを明らかにすることの重要性が窺われた。そこで、今年度はまずマクロファージの活性作用についての検討を行った。実験は、マクロファージの前駆細胞である単球をヒト血液から分離採取して洗浄後、培地RPMI1640(0.1%血清含)で懸濁して、細胞数を10^5cells/wellとし45分間培養した。その後、低出力レーザ光(波長:594nm,780nm)をフィルタならびに照射時間を調節して照射を行い、各々の照射エネルギーに対する単球の活性度を活性酸素量を計測することによって評価した。その結果、可視光の波長域よりも長波長である780nmの近赤外光の方が活性作用が高いこと、また780nmでも5〜10J/cm^2の範囲でピークを示すことが窺われ、それより高いエネルギーでは低下する傾向が見られた。これらのことから、マクロファージの前駆細胞である単球の活性度は低出力レーザ光の波長やエネルギーに依存することが窺われた。したがって、次年度はこれらの波長やエネルギー範囲を中心にパッチクランプ法を用いてイオンチャンネルや膜電位などの膜特性を検討し、レーザ光が及ぼす免疫担当細胞のメカニズムの詳細を明らかにする計画である。
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