研究概要 |
低出力レーザ光が及ぼす免疫担当細胞への影響は、ヒト単球を洗浄培養した後、低出力レーザ光(波長:594,780nm)をフィルタならびに照射時間を調節して照射を行い、各々の照射エネルギーに対する活性度を活性酸素発生量から評価した。その結果、可視光の波長域よりも長波長である780nmの近赤外光の方が活性作用が高いこと、また780nmでも5〜8J/cm^2の範囲でピークを示すことが窺われ、それより高いエネルギーでは低下する傾向が見られた。これらのことから、マクロファージの前駆細胞である単球の活性度は低出力レーザ光の波長やエネルギーに依存することが窺われた。 一方、パッチクランプ法による細胞膜特性の検討では、単一チャネル法によってパイロットスタディとして赤血球を用いてレーザ光照射の影響を検討した。その結果、波長670nmの赤色レーザ光の照射では照射エネルギーが0〜100mJ/cm^2の範囲で印加電圧に対してほぼ比例して膜のイオン電流が変化した。また、負の印加電圧においては光照射によって若干膜電流の増加が窺われた。膜抵抗の変化は印加電圧の減少に伴って減少する傾向があり、さらにレーザ光照射によってそれは増加する傾向が見られた。波長594nmのオレンジ色のレーザ光照射の場合は全体として赤色レーザ光と同様に印加電圧にほぼ比例する傾向が見られたが、35〜105mJ/cm^2の照射エネルギーにおいて膜のイオン電流値の正負が反転する現象が見られ、さらに照射エネルギーを増加すると再び電流値は反転し元に戻る現象が見られた。この際、反転時の膜の抵抗値は正負いずれの印加電圧においても負の値を生じる結果が得られた。これらのことから、この範囲のエネルギーレベルにおいて細胞膜の脱分極も含めた何らかの作用が生じた結果によるものと考えられ、さらに膜の電気容量などの詳細な作用メカニズムの解析の必要性が示唆された。
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