研究概要 |
本年度は、ロンドン大学教育研究所(IOE)のDr.Sally Power,Professor Geoff Whittyの協力を得て以下の研究遂行を目指した。第1に教育改善指定地域(Education Action Zone,以下EAZ)政策の起源と展開を国及びゾーンレベルで検証すること。第2に実施過程とゾーン、学校、家庭レベルへの影響力を検証すること。(学校の成績、カリキュラムの革新、学校教育の文化と価値、社会的包摂と排除の類型、教師の活動の変化、ゾーンの境界地帯の規定と管理)。第3に国と市民社会との関係性の変化について考察すること。第4に教育政策の過程分析の精緻化を図ることとである。 その結果、本研究において、EAZ導入をニュー・レーバーの教育困難校の学校改善に向けての新たな支援システムの構想と捉え、その導入過程、政策意図、実施過程に関する事例分析を通して、EAZの特質と課題を明らかにした。その際、特に複合的なアイディアとしてのEAZ施策について、(1)貧困対策と学力向上の連結した統合的政策、(2)公的セクター、私的セクター、ボランタリ・セクター(第3セクター)のパートナーシップによるニュー・ガバナンス(新たな協治)の試みといった点に注目した。これらの点を2000年11月に教育雇用省(DfEE)、3箇所のEAZ(Weston super-Mere,Newham,North Southwark)並びに全国教員連盟(NUT)への訪問調査とインタビューをもとに解明した。その成果を、日本比較教育学会第36回大会で「イギリス教育改善指定地域(EAZ)にみる学校再生支援事業の特質」(宮腰英一、池内耕作、吉原美那子)と題し発表した。
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