研究課題/領域番号 |
11691010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桜井 由躬雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80115849)
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研究分担者 |
鈴木 玲子 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (40282777)
加藤 久美子 名古屋大学, 文学部, 助教授 (80252203)
黒田 景子 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (20253916)
重久 美佐紀 神田外国語大学, 外国語学部, 講師
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キーワード | メコンデルタ / ロンアン / カインハウ / ドイモイ / ホーチミン / ナムディン / ディエンビエンフー / 紅河デルタ |
研究概要 |
本年度はまったく予期しないラオスにおける爆破事件の頻発のために、当初計画していたヴィエンチャン周辺村落の調査が不可能となり、94年以来豊富な調査経験をもつ紅河デルタ村落に調査地を変更した。 1.メコンデルタ調査 1995年以来調査を継続しているベトナム、ロンアン省村落調査を続行する一方、カンボジア国境のドンタップ地域開拓村の調査を行った。 2.紅河デルタ村落調査 1994年以来、継続調査を行っていたナムディン省タインロイ社の5年ぶりの全戸網羅調査を行い、前回1995年との比較分析を行った。 3.1999年度に引き続き、ベトナム・ラオス国境地帯のライチャウ省ディエンビエンフー郊外のタイ村落を調査した。 ベトナム村落の核的な位置にある紅河デルタ村落では、野菜など農業生産による現金収入の比率は激減し、出稼ぎ収入が拡大していること、畜業を中心に現金獲得のための多角化が顕著である。農業経済構造の変質によって、村落指導層はこれまでの名門長老層から軍出身の40代の層に移行している。メコンデルタでは、土地なし層が増加して、村落内の階級的分裂が深化している。都市の労働市場も縮小し、村落内失業問題が顕著である。カンボジア国境沿いでは、すでに新しい開拓空間はなく、むしろ、零細農園経営者がデルタに戻る還流現象が発生している。ダー川流域のタイ人村落では、都市への就業機会はまったくなく、富裕層は第一には水田の集約化による商業米の増産、第二には山地に農園を開き、畜業を中心とした多角化をはかり、貧困層はその労働者として雇用される傾向が生まれている。メコン・紅河両デルタにおいて、社会主義時代に凍結されていた伝統的な村落社会が市場経済化とともに、それぞれの地域において異なった対応、展開が進んでいる。
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