研究課題/領域番号 |
11691010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桜井 由躬雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (80115849)
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研究分担者 |
重久 美佐紀 神田外国語大学, 講師 (80316819)
菊池 陽子 東京外国語大学, 外国語学部, 講師 (60334447)
加藤 久美子 名古屋大学, 文学部, 助教授 (80252203)
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キーワード | ラオス / カンボジア / メコンデルタ / 紅河デルタ / 村落 / 移動 / シップソンパンナー / 商品経済 |
研究概要 |
本計画はメコン河水系に依存する村落の社会歴史構造の比較研究を目的としたものである。当初計画からはラオス、カンボジアが政治状況変化のために、今期はラオスの仮調査にとどまったが、メコンデルタ調査、メコン上流、北タイ、シップソンパンナー地域の調査は三年次を通じて予定どおり完了し、これに従来からの継続課題であった紅河デルタおよびダー河、ユン河流域のタイ人社会との比較研究を加えることができた。研究の進捗につれ、本研究の主題は各社会の相似性に移行した。メコンデルタのデルタコアのカインハウでは、二つの大きな農民移動の流れがある。第一は都市の非農業部門への移動であり、第二はデルタフロンティアへの移動である。一方、フロンティアとされるドンタップ地域では、すでに開拓すべき土地が限界に達し、早期の開拓者と後期のそれとでは土地所有、経営上の懸隔が生まれ、結果的に新規の開拓者集団から都市部への環流現象が顕著である。この結果、村落は2地域ともに中規模の専業農家を中核とし、フロンティアでは大規模農家、コアでは非農業経営者を上層とし、賃労働者群を下層とする三層構造が成立している。フロンティアでの中核農民層は早期の開拓者であり、コアでは村落外権威との関係が重要である。紅河デルタにおいてもこの傾向は同様であり、村から南北都市部への移動が顕著である。均質な農民群によって構成される紅河デルタ村落では、都市との近接性、ネットワークの存在が大きな地域偏差を生んでいる。一方、メコン上流部の山地村落では、低地との文化的な差異から都市部への移動は顕著ではなく、低地から孤立した自給的な生産活動しかなく、しかし、低地からの商品経済の流入に対応して、商品作物栽培を目的とする自然破壊が進んでいる。メコン流域における市場経済の進展は、各地域に共通した影響を与えるとともに、地域の個性に依拠した個別的な対応の偏差を生んでいる。
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